好印象をもてない出会い
私は車の免許を取りドライブが趣味となっていた。彼氏とは半年前に別れ、しばらくは1人で自由気ままに過ごしていたかったのだ。友達とプールへ行ったり、美味しい店を知ると、どこにでも車で移動。誰にも気を遣わず好きなことをして楽しんでいた。
とある日、親戚のお姉ちゃんから電話がきた。近所に住んでいたので時々会って食事をしたり、買い物に行ったりしていた。
電話の内容は、「仕事場まで迎えに来てほしい」とのこと。特に予定は無かったので迎えに行く約束をした。
行ってみると沢山の荷物があり、持って帰れないから迎えを私に頼んだらしい。そこには、見知らぬ体格のいい男性が一緒にいたのだ。
親戚のお姉ちゃんの仕事関係の人らしいが、すごく馴れ馴れしく、やたらとスキンシップの多い人で私は少し引いていた。
男性が「せっかくここまで来てくれたからご飯でも行こうよ」
と、言って3人で食事をし、ご馳走してもらいお姉ちゃんを送ってから帰ってきた。
誘われるままに
何日か経った日、お姉ちゃんから電話が来て、飲みに行こうと誘われた。待ち合わせ場所に着くとこの間の男性もいた。
また、あいつだ!と心の中で思う。
あまり会話をしないでいると、デコピンされたり、髪を触られたりしてちょっかいを出してきた。
お姉ちゃんがトイレへ行くと言い、席を外した隙にあいつが私のスマホを取り上げ電話番号を知られてしまう。
お姉ちゃんが帰ってきて、何事もなかったかのような素振りで3人の会話が戻り、2時間後お開きとなったのだ。やはり良い印象が持てなかった。
次の週末にあいつから電話がきた・・・
「お前どうせ暇だろ!今から迎えに行くから駅で待ってろ!」
断る間もくれず電話を切られた。
しかたなく駅へ行き彼に会った。車に乗ると、拍子抜けする言葉がきた。
「用があったならごめんな」と・・・
私は「うん」
としか答えなかった。
あいつはいつもと違い優しかった。違和感だらけで私の頭の中で何?何?状態。あいつ、本当は優しいヤツなのか?と・・・
その日はドライブをして、食事をして、送ってもらった。
優しくされるとツライ
あいつの優しい一面を発見し私はどう接していいのか戸惑った。
それから時々電話をくれるようになり、2人で会う機会も増えていき、あいつの優しさに慣れ、あいつを・・・彼を意識するようになっていった。私たちの関係ってなんなんだろう?彼が気になって気持ちがモヤモヤしていた。
私は彼を好きになっていた。
それなのに気持ちを確かめることも、私から彼に電話をすることもできなかった。
そんな気持ちでいるある日、お姉ちゃんから電話が入ったのだ。
彼と付き合っていて、赤ちゃんが出来たから結婚するという報告だった。
私の頭は真っ白。
ドラマなどで頭が真っ白になった!というシーンがあるが、私は経験がなく、この時初めて体感してしまった。お姉ちゃんに何を言っていいのかわからず、「おめでとう。元気な赤ちゃん産んでね」と無意識に言っていた。
現状を理解するのに少し時間がかかったが、やっと自分の立場を理解できた。
彼は私が事実を知ったことを知らない。
いつものように誘いの電話をしてくる。私もお姉ちゃんに悪いと思う気持ちを持ちつつ、彼に会いに行ってしまう。しばらくはそんな日が続いたのだ。
連絡を待ってしまう・・・
彼とお姉ちゃんの関係を知ってずっと悩んでいた。
お姉ちゃんには幸せになってもらいたい!
でも、私も彼が好きなんだよ!
秘密にしていればバレないかな?など自分の都合のいいように考えていた。彼はどんなつもりで私を誘っていたのだろう?気になったがやっぱり聞けなかった。聞いたらもう、彼に会えなくなってしまいそうで・・・
正しい答えはきっと私が彼を忘れて、今までのことを黙っていればいいんだ!
彼とはもう会わないようにしないと思いつつ、彼からの着信を待ってしまう自分がいた。
彼と最初で最後の旅行
彼からの電話が鳴るとつい出てしまう・・・
彼から誘われるとつい行ってしまう・・・
たまには我慢して断ったりもするけど、寂しくて辛い。
そんなある日、彼から旅行の誘いがあった。
「友達と旅行に行くけど、お前もおいでよ!友達も彼女連れてくるからさ。」
迷いはあったが誘いにのった。お姉ちゃんにめちゃめちゃ罪悪感を感じてはいたけど、嬉しくて行きたい気持ちが勝ってしまったのだ。
彼の友達はいたけど、彼と初めての旅行はテンションがあがった。友達も楽しい人たちで、車内も観光地巡りも笑いっぱなしだった。
ずっと彼と手をつないで、彼の友達には彼女として接してもらい幸せな旅行で帰りたくなかった。
そうはいかないのが現実。
彼に送ってもらい自分の部屋へ帰ってきた。幸せな気持ちと旅行が終わってしまった悲しさとで複雑な気持ちでいた。
わかっていた結末・・・
旅行後もしばらくは彼との関係はかわらずにいた。
久々にお姉ちゃんに会って現実を突きつけられるのだ。
お姉ちゃんはお腹が少し大きくなっていた。仕事が落ち着いたから仕事を辞め、これから籍を入れ彼と一緒に住む準備を始めるらしい。お姉ちゃんはとても幸せそう・・・
大きくなったお腹を見て、私はいい加減きっぱり諦めないといけないと思った。
それからしばらくは仕事が忙しいと理由で彼の誘いを断り続けた。何度か断り続けていると、彼がどうしても会いたいと言ってきたので会うことにした。
久々に会って顔を見たとたん涙があふれて、こらえようにも、こらえられない。
彼にしがみつきわんわん泣いた、ぐちゃぐちゃになった顔見られたくないけど、涙が止まらないんだよ!
彼は何も言わずに泣きやむのを待ってくれていた。きっと彼はすべてを察したのだと思う。あまり会話もせず、彼に送ってもらった・・・
お姉ちゃん!幸せになってね。
kai著